5年前のあなたは、今のあなたをどこまで予想できていましたか?
今の会社で働いていること。
できるようになった仕事。
大切にしたい働き方。
仕事に対する考え方。
5年前に想像していた自分と、少し違っている人も多いのではないでしょうか。
それなのに転職活動になると、「5年後、何をしていたいですか?」「将来のキャリアプランを考えましょう」と、未来の答えを求められることがあります。もちろん、将来を考えることは大切です。
でも、5年後の仕事を今決める必要はありません。考えたいのは、「5年後に何をしているか」よりも、5年後に、どんな選択肢を持っていたいか。
今回は、今のキャリアの「現在地」から未来を考えるための、5つの転職軸を紹介します。
私たちは「未来の自分」を意外と予測できない
実は、「今の自分が、この先もそれほど変わらない」と考えてしまうことについて、興味深い心理学研究があります。2013年に科学誌『Science』に掲載された研究では、18歳から68歳までの19,000人以上を対象に、過去の自分がどれくらい変化したか、そして未来の自分がどれくらい変化すると思うかを調べました。
その結果、人は「過去の自分は変わった」と認識する一方で、これからの自分の変化は小さく見積もる傾向 が確認されました。研究では、この傾向を「歴史の終わり幻想(End-of-History Illusion)」と呼んでいます。PubMed
これは、キャリアを考えるうえでも面白い視点です。
今は「給与を上げたい」と思っていても、数年後には時間を大切にしているかもしれません。
今は興味のない仕事が、経験を重ねることで面白くなるかもしれません。
逆に、今は好きな仕事でも、数年後には別のことに挑戦したくなるかもしれません。
未来の自分は、今の自分の延長線上に固定されているわけではない。だからこそ、転職軸は「未来を固定するもの」ではなく、変わっていく自分にも選択肢を残すためのものと考えてみてもいいのです。
5年後を「決める」のではなく、5年後につながる「方向」を考える
では、将来のキャリアプランを考える必要はないのでしょうか。そういうことでもありません。ポイントは、未来を考えることと、未来を決めることは違う ということです。
キャリア理論には「計画された偶発性(Planned Happenstance)」という考え方があります。
キャリアには、偶然の出会いや予想していなかった仕事、環境の変化などが入り込みます。そのため、将来を完全に計画するのではなく、予期しない出来事を学びや機会へ変えていくことが重要だと考えます。理論では、そのための力として好奇心、粘り強さ、柔軟性、楽観性、リスクテイクなどが挙げられています。Wiley Online Library
つまり、方向は持つ。でも、ルートは固定しない。これくらいが、キャリアを考えるちょうどいい距離なのかもしれません。
まず確認したいのは、未来より「現在地」
「5年後どうなりたい?」と聞かれて困ったら、無理に答えをつくらなくても大丈夫です。先に確認したいのは、今のキャリアの「現在地」です。
たとえば、
・これまで、どんな仕事を経験したか
・何ができるようになったか
・どんな仕事はやりやすかったか
・逆に、何がしんどかったか
・今の仕事で何を変えたいか
・これからも残したいものは何か
を振り返ってみます。
「やりたいこと」が分からなくても、変えたいことや残したいことなら見つかることがあります。そこから次に進む方向を考えていけばいいのです。
「今」と「未来」をつなぐ5つの転職軸
ここまで、今のキャリアの「現在地」を振り返ってきました。では、そこから次の仕事をどう選べばいいのでしょうか。
ここでは、仕事選びを5つの軸に分けて考えてみます。
最初の3つは、「今の自分は、仕事に何を求めているのか」を見るための軸。
後半の2つは、「その選択は、この先どこにつながるのか」を見るための軸です。
「今」だけを見ると、給与や休日など目の前の希望条件だけで仕事を選びやすくなります。反対に「未来」だけを見ると、将来のために今を我慢する仕事選びになってしまうかもしれません。
「今の自分も、その先の自分も見る」そのための5つの軸です。
1.WORK|どんな仕事・経験をしたい?
「営業がしたい」「事務がしたい」のように、職種名だけで考える必要はありません。大切なのは、その仕事で何を経験したいのかです。
たとえば同じ営業職でも、
新しい顧客を開拓する。
既存顧客と長く関係をつくる。
顧客の課題を聞いて提案する。
では、経験することが違います。
「何になりたい?」では答えが出なくても、「次の仕事では、何をやってみたい?」なら考えられるかもしれません。職種名だけではなく、そこで経験する仕事まで見てみましょう。
2.LIFE|仕事以外も含めて、どう暮らしたい?
年収、休日、勤務時間、勤務地、リモートワーク。こうした希望条件も、大切な転職軸です。ただし、条件だけで終わらせず、もう一段だけ掘ってみます。
たとえば、「土日休みがほしい」なら、「なぜ、土日休みがほしいのか?」
家族や友人との時間を増やしたい。
趣味を続けたい。
生活リズムを整えたい。
理由によって、本当に必要な条件は変わります。条件そのものではなく、その条件によって、どんな生活を実現したいのかまで考えてみましょう。
3.FIT|どんな環境なら力を発揮しやすい?
同じ仕事でも、働く環境によって自分の力を発揮しやすいかどうかは変わります。一人で裁量を持って進めたい人もいれば、チームで相談しながら進めたい人もいます。研修が整った環境が合う人もいれば、早い段階から仕事を任せてもらう方が成長しやすい人もいます。
だから、「いい会社か?」だけではなく、「自分が働きやすい会社か?」という視点も必要です。これまで働きやすかった環境と、反対にしんどかった環境を振り返ってみると、自分なりのヒントが見つかります。
ここまでの3つは、「今の自分は、仕事に何を求めているのか」を考えるための軸です。でも、転職先を選ぶときに考えたいことは、もう一つあります。「その会社で働いた先に、何が残るのか?」
ここからは、少しだけ時間を先に進めて考えてみましょう。
4.GROW|その仕事で、何ができるようになる?
次に見るのは、その仕事を経験したあとの自分です。「今の自分にできる仕事か」だけではなく、「この仕事を経験すると、何ができるようになるだろう?」と考えてみます。
顧客に提案する力。
数字を分析する力。
人を育てる経験。
プロジェクトを動かす経験。
専門的な知識や技術。
得られるものは仕事によって違います。もちろん、すべての人が「市場価値を上げること」を最優先にする必要はありません。それでも、次の仕事で得られる経験を知っておけば、その転職を「入社するまで」ではなく、「入社したあと」まで考えられる ようになります。
5.OPTION|5年後、どんな選択肢を持っていたい?
最後の軸では、「5年後、何になりたい?」ではなく、「5年後、何を選べるようになっていたい?」と考えてみます。
専門職として仕事を続ける。
マネジメントに進む。
別の職種に挑戦する。
働く場所を選べるようになる。
生活の変化に合わせて働き方を変える。
今の時点で、どれを選ぶか決める必要はありません。大切なのは、未来の自分を一つに決めることではなく、未来の自分に、選択肢を残しておくこと。5年後の「職業」を決めるのではなく、5年後に「選べる自分」をつくっていく。それも、転職先を考える一つの方法です。
「市場価値を上げる」が全員の正解ではない
キャリアの話になると、「市場価値を上げる」という言葉を目にすることがあります。もちろん、それを大切にしたい人もいます。でも、転職で求めるものは人によって違います。
年収を上げたい人。
家族との時間を増やしたい人。
好きな仕事を続けたい人。
専門性を高めたい人。
まだ分からないから、まず経験を増やしたい人。
どれか一つが、キャリアの正解というわけではありません。大切なのは、5つの軸を全部最大にすることではなく、「今の自分は、何に重みを置きたいのか」を知ることです。
5つの軸は、人によって「重み」が違う
たとえば、同じ年収400万円の2社があったとします。
A社
今までの経験を活かしやすい。
残業が少なく、休日も安定している。
新しく経験できる仕事はそれほど多くない。
B社
未経験の業務も担当する。
学ぶことが多く、最初は少し大変。
数年後に仕事の幅が広がる可能性がある。
A社とB社、どちらがいい会社でしょうか。この情報だけでは決められません。今、生活を整えることを大切にしたい人なら、A社に魅力を感じるかもしれません。経験の幅を広げたい人なら、B社に魅力を感じるかもしれません。同じ求人を見ても、何を大切にするかによって評価は変わります。


5つの軸は、すべてを「5」にするためのチェックリストではありません。
◆ LIFEを大切にする時期があってもいい。
◆ GROWを優先して挑戦する時期があってもいい。
◆ 今はFITを一番大切にしたい、という人もいるでしょう。
そして、この重みはずっと同じとも限りません。仕事を経験したり、生活環境が変わったりすることで、大切にしたいものも変わっていきます。だから転職活動で探したいのは、「5つの軸をすべて満たす会社」ではありません。
今の自分は、何に重みを置きたいのか。そのうえで、自分に合う選択肢を比べていくことが大切です。
その転職は、5年後の自分に何を残す?
求人を見るときに、最後にもう一つだけ問いを加えてみましょう。
「この会社で働いた経験は、5年後の自分に何を残してくれるだろう?」
スキルかもしれません。
経験かもしれません。
自信かもしれません。
人とのつながりかもしれません。
あるいは、「自分にはこの働き方が合っている」と分かることかもしれません。
キャリア構築理論では、変化する仕事や環境に対応するための「キャリア・アダプタビリティ」という考え方があり、未来への関心、自分で選ぶ感覚、可能性を探索する好奇心、行動する自信などが重視されています。Mark Savickas
未来を正確に当てる力ではなく、変化しながら次を選べる力です。次の会社は、キャリアのゴールではありません。次の自分をつくる、一つの経験でもあります。
5年後の仕事を、今決めなくていい
これから求められる仕事やスキル自体も変化していきます。
世界経済フォーラムの「Future of Jobs Report 2025」では、企業は2030年までに働く人の主要スキルの39%が変化すると予測しています。また、AI・ビッグデータなどの技術スキルだけではなく、創造的思考、柔軟性、好奇心や継続的な学習なども重要性が高まるとされています。World Economic Forum
だからこそ、今から5年後の「正解の仕事」を当てる必要はありません。
現在地を知る。
大切にしたいものを知る。
次の一歩を選ぶ。
経験する。
そして、また選び直す。
キャリアは、その繰り返しでもいいのです。5年後の仕事を、今決めなくていい。5年後に「選べる自分」をつくっていきましょう。
5年後の答えがなくても、キャリアは考えられます
「自分が何を大切にしたいのか、まだ整理できていない」
「求人を見ると、どれも一長一短に感じる」
「今の経験から、どんな選択肢があるのか知りたい」
そんな段階でも大丈夫です。
PF+Agentでは、転職を前提に求人を選ぶだけではなく、これまでの経験や今の働き方を振り返りながら、これからのキャリアを一緒に整理します。未来の答えを決めるのではなく、まずは今の「現在地」から考えてみませんか?
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